理事長室

第7弾:突然変異 「動物は何本足が最適か」を考える。

  • 2021.2.22
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「変異種」という言葉を良く聞くようになりました。あまりいいイメージではありません。異常な事態が次から次にどうして起こるのだろうかと思っていた矢先に、またコロナウィルスの変異が出てきたということですから無理もありません。ただ、突然変異は異常なことではなく、コピーを繰り返していたら、画像が不明瞭になるように当然に起こるべき現象です。進化の歴史を考えれば、私たち人類自体が突然変異の繰り返しの結果、存在していると言っても過言ではありません。
 突然変異を考えているうちに「動物は何本足が最適か」というお題を思いつきました。生活するために何の役に立たないことを考えることは、最高の贅沢です。生活に追われ、心配事があれば、とても考える気になりません。私も、この文章を見ているあなたも、それほど不幸せではないのだと確信しています。
 さて、すべての動物にとって足は絶対的なものではありません。海中を泳ぐには足は必要なく、むしろ邪魔な存在です。クジラやイルカの先祖は足があったはずですが、海中生活に適応して退化しました。ペンギンは海から地上、空に進化したのに、あえて逆コースに進化している実に不思議な生き物です。生命の起源は海から来ていますので、最初の生物はクラゲのように受動的に海に漂っていた状態だったと思います。これが能動的に魚のように泳ぎ出すもの、タコ、イカのように水を吹き出し反動で動くもの、海老や蟹のように海底を這うように動くものなど多種多様に進化します。
 ただ、陸上で生活する動物は特殊な例を除き、どうしても足が必要になります。では、どのように足は生まれたのでしょうか。大方、2つの系統があるようです。もともと無かった足を作ったグループと、多くの足が減少して少なくなったグループです。
 前者の代表は脊椎動物で、我々人類もこのグループの中に入ります。もともとは水中生活をしている魚が先祖であり、前後、左右にあるヒレが進化して出来たのが足です。したがって4本足になりました。水の中では足は不要ですので、特殊な環境の下で進化と考えらえます。例えば湖の中で倒木などの障害物があり、自由に泳げない環境に適応したと思われます。身近な判り易い例が有明海のムツゴロウです。ハゼ科の魚は海底に張り付いてあまり泳がない魚ですが、とりわけ有明海の特異な環境に適応しました。前ビレを足のように使って潟の中を器用に這いまわっています。陸上生活には肺呼吸や乾燥から身を守る皮などが必要であり、進化には時間がかかりましたが、カエルなどの両生類からトカゲなどの爬虫類に確実に進化して、地上に進出し4本足を獲得しました。

 後者の代表は節足動物である昆虫などのグループです。生物は5億5千年前のカンブリア紀に爆発的に生まれ進化したと言われていますが、その中にお馴染みの化石に三葉虫がいますが、複数の足を持っています。節足動物はもともと繊毛のようなものを各節に持っており、それが足に進化したものと思われます。ムカデをイメージしてもらえば判りやすいでしょう。ただ、それぞれの足と脳が密接につながっての複雑な動きを制御しているようには思えません。スタジアムの観客席でウェーブを起こす応援の手法がありますが、ムカデの場合は、それに近いとシステムだと思います。隣の人は立ち上がったら立つという動作と同じように、隣の足が上がったら上げるという単純な動作に体にひねりを加えると前への推進力が発生します。生存競争のためには、より迅速な運動能力を手に入れる必要があります。制御の正確性や迅速性を高めるために足の数が減少する方向に進化が進んだと推論します。節足動物はとても種類が多く、足の数もバラエティーに富んでいます。ただ、その中で最終的に行き着いた先は足が6本の昆虫たちです。すでに4億6千万年から存在している昆虫は100万種以上の種類があり、現在も大繁栄しています。
 2つもグループの頂点に立って繁栄している生物から、最適な足の本数は4本か6本かに絞られました。さて、決勝戦です。「4本足に決まっているではないか。相手は虫けらだろう。」と思われる方も多いと思います。しかし私はあえて正解は6本足とさせていただきたいと思います。
 退化と進化の関係性を見れば、進化は長い年月が必要ですが退化は、比較的短期間で起こります。仮に六本足が最適だったとしても、四本足の生物が六本足になることは容易なことではありません。これまで可能性があったとすれば、前と後に中間に中ビレがある魚がいて、その魚が進化して六本足になったという場合だと思います。しかし進化の歴史は後には戻りません。
 一方、六本足が四本足に退化することは、二本の足を全く使わなくなったら容易に起こります。盲腸のように、使わない部位はすぐに退化していくからです。もし6本ではなく4本が最適ならば、すでに2本の足が退化して、4本足になったはずです。しかしながら昆虫は4億6千万年の間生き続け、100万種以上に進化しながら、足を4本にした進化例は一例もないのです。このことは昆虫の世界においては、足の数の進化はすでに結論が出たということでしょう。