理事長室

田舎者の系譜(東北編)

  • 2021.2.1
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 東北人のことを何も知らないで、ものを言うのは不敬だと思うのですが、行きがかり上、東北についてもコメントしたいと思います。
 アニメ漫画で思いつくのは、川崎のぼる作画で「いなかっぺ大将」という作品です。青森から上京した少年「大ちゃん」は一流の柔道家を目指し、ニャンコ先生とともに、修行を励むが、いつもドジばかりしているというストーリーで、まさに絵にかいたような田舎者です。
 ほのぼのとした良い作品だと思うのですが、現実には、東京にいる東北人は田舎者を丸出しにするようなことはせず、ひたすらズーズー弁を封印して身を隠している印象があります。勝手に東京人が考えた感は否めません。
 東北の良質な田舎者感を醸し出している作品は、むしろ歌謡や演劇の方が多いようです。
 中学を出たばかりの就職者が金の卵と言われた時代、井沢八郎の「ああ上野駅」は東北人の心情を謳っていたし、吉幾三の「俺ら東京さ行くだ」は文句のつけようもない田舎者ソングです。昨年の朝ドラ「エール」の主人公、作曲家古関裕而は福島県出身でしたが、いかにも東北の人らしい純朴なキャラクターでした。
 不朽の名作、橋田壽賀子脚本の「おしん」は幼年期を山形県に設定しました。奉公に出るため、雪の最上川を下るシーンは世界中が涙しました。国民的人気ドラマとなった宮藤勘九郎脚本の「あまちゃん」はコミカル仕立てでしたが、舞台は岩手県三陸海岸しか考えられません。
 作家藤沢周平は山形県鶴岡市の出身です。架空の藩「海坂藩」を舞台にした作品群は映画化され、深い陰影のある作品に仕上がっています。最近のお気に入りは土橋章宏の「超高速参勤交代」です、福島県いわき市に実在した小藩、湯長谷藩1万5千石が舞台となります。「殿、利息でござる」は、歴史家磯田道史が市井の市民から仙台藩吉岡宿の穀田屋十三郎のことを書いてくれと手紙で託され、評伝として書籍化されたものが、感動ドミノのような展開で映画化されたものです。このコミカルさと情緒性を同時に表現できるのは東北人の田舎者文化の特質のような気がします。