理事長室

アメリカとの相性

  • 2020.8.3
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 他民族国家であり、国家理念で国をまとまっているアメリカと単一民族で共同体の論理で国を運営している日本とは真逆の存在のように感じますが、意外と相性はいいと思います。黒沢明の「七人の侍」をオマージュして、ジョン・スタージェス監督が「荒野の七人」を作り、大ヒットしました。無法地帯の中で、自分たちの力で生き抜く物語ですが、これに共感する感情を濃厚に持っているのがアメリカ人です。アメリカは移民者が開拓してできた国です。アメリカ東海岸に上陸した開拓者達は、西に向かいました。汗を流した分、原野が畑に変わります。そしてその畑を守るのは、自分たちしかいません。これがアメリカという国の原型です。

 アメリカ人はバラバラで、気ままに勝手なことをやっているイメージですが、危機になると不思議に国が一つにまとまります。最近、警察官による黒人殺傷事件を契機に全米にデモが広がりました。襲撃騒動までエスカレートして、さらに国民の分断が広がることを心配する声もありますが、逆にこの集会に参加する庶民のエネルギーこそがアメリカの強みです。
 アメリカ人は、自分たちが国を作ったという意識を濃厚に残しており、「当事者意識」が極めて高いのです。自分の将来は自分で切り開くものだと思っています。アメリカで新しい産業が興るのは、当事者意識の高い、優良な経営者資質を持った人が多いからだと思います。
 自らが動くことで、世の中が変わると思っている人が殆どいない日本はこの点で見劣りします。ただ、それを補うように当時者意識の高い一群がいます。番頭以下の従業員たちです。彼らは指示を受けなくとも、常に商売を考え、工夫をし、工程をカイゼンしていきます。
 実は西部劇の時代に近い状況が日本史の中にもあります。鎌倉時代前夜の東日本です。関東平野はこんもりとした森でした。そこが田畑に変わっていきます。アメリカとは逆方向の東に向って開拓していきます。汗を流した分、田畑が広がります。そして、やはりその田畑を守るのは自分たちしかいませんでした。開拓者たちは自衛のために戦い、武士の原型となります。危機に直面した時に評論家は不要です。当事者意識をもって事態を打開しようとする人たちが仲間を作り、協力してやるべきことを決めます。そして自分が請け負った役割が義務ということになります。
 約束した組織への帰属意識にもよりますが、日本人はこの義務を果たすという価値観に大きな比重を置いていて、使命感、責任感という形に昇華していきます。時代が下れば、武士のありようも大きく変わりますが、義務意識が強い部分は引き継いでいます。例えば「葉隠れ精神」は武士道から不純物を除き結晶化したようなものですが、義務を守る対価として「命」まで求めます。「武士道は死ぬことと見つけたり」の精神です。
 こうした特性は日本を「ものづくり大国」に押し上げた要因にもなりました。車は3万点以上の部品から作られますが、日本の部品は一つ一つが高い責任感で作られており、結果として、日本車の性能が良いのは当然です。
 国家同士の同盟関係や企業がビジネスパートナーを決める判断基準は、まず相手が信用できるかどうかだと思います。両国が根っこの部分で価値観を共有していることは大きいと思いますし、未来志向に両国の関係を考えるなら、目先の利益ではなく「当事者意識が高い」ことを貴ぶ社会を継続していくことだと思います。
 自らの足で立とうとせず、アメリカの価値観や日米同盟という名の主従関係を唯々諾々として受け入れるなら、もしアメリカがこけた時、中国を妄信してきた韓国と同じ轍を踏むことになります。