理事長室

「クレヨンしんちゃん」に見る究極の田舎者の系譜

  • 2021.2.8
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 クレヨンしんちゃんというアニメ漫画があります。埼玉県春日部市の5才になる幼稚園児「しんちゃん」こと「野原しんのすけ」が主人公です。もともとナンセンスギャグ漫画ですが、大人社会の建前を見抜くような幼児の一言の爽快さが人気です。このため原作者の臼井儀人は事故で10年以上前に亡くなりましたが、プロダクションの漫画家たちが後を継ぎ、公表以来30年近くテレビ放映されています。春日部市は原作者が育った街ですので、舞台を設定したのは自然の流れだと思いますが、ダ埼玉と言われる埼玉県の田舎者風評を逆手にとって、田舎者に染めてやろうじゃないかという、思惑を感じます。
 名前も平凡なようで凝っています。両親の姓は「野原」、「小山」で何の変哲もないようですが、田舎の風景を題材にしています。両親の名前「ひろし」、「みさえ」も平凡な名前ですが、ひろしの兄が「せまし」。みさえの姉妹は「まさえ」と「むさえ」で完全にダジャレにしています。
 問題は出身地です。私の九州・東北田舎者説を忠実に再現していました。父親は「ひろし」秋田県出身です。そして母親は「みさえ」熊本県アソ市出身です(原作が出来た時は平成の合併前で今の阿蘇市はなかった)
 「みさえ」のプロフィールをご紹介します。小山よし治、ひさえ夫婦の次女として生まれる。三人姉妹の真ん中。年齢は29才。熊本市立大熊小学校、大熊中学校、県立水後寺高校、私立加藤清正女子短期大学を卒業、高校時代はバスケット部所属。上京して、小山田物産に就職しますが、野原ひろしと結婚し、現在2児の母、専業主婦です。性格は短気で、見栄っ張り、ケチ。利かん気で子供っぽいところもあります。夫ひろしを完全に尻に敷いていますが、情は深く家族を強く愛しています。
 漫画の宿命として、面白くなければ意味がありません。母親の短所が前面に出るのはやむを得ないでしょうが、東北ではなく、九州出身にしたのは必然と思います。東北に比較して九州の方が性格的に強いに決まっており、恐妻家の方が漫画としては面白いからです。
 さて、注目は双方の祖父をどのように性格設定しているかです。
 まず父方からです。「野原銀の介」は秋田県七曲で農業を営んでいます。禿げ頭で、性格は孫のしんのすけにそっくり、スケベでいたずら好きなおバカなじい様です。しんのすけのギャグのぞうさん踊りは銀の介の直伝です。若者文化の取り込みは早く、ミスチルのCDを聞いたり、場当たり的に自家用車を電飾したりして浪費癖もありますが、バイクで全国ツアーに参加したり、カッコいい行動派でもあります。
 一方、母方の「小山よし治」は元中学の教頭先生、厳格で頑固な九州男児とされています。ただ、本当は女性好きの一面も。亭主関白も実は愛妻家で妻がいないと何もできないタイプです。趣味は写経と囲碁。NHKのニュースを必ず見ます。銀の介からは「阿蘇のカルデラじじい」とあだ名をつけられています。
 この対照的な性格設定は何を意味するのか。繰り返しになりますが、九州人、東北人の性格を類型化したものではありません。ただ、東京人が持っているイメージを面白おかしく膨らませると、このようになることは事実として受け止めた方がいいでしょう。田舎者と思われているけれど、決して悪いことではなく、ポジティブに受け取っていいと思っています。